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全国肥料商連合会(全肥商連)
平成27年 10大ニュース

1.第51回全国研修会開催
 第51回全国研修会は、「北の大地 まるごと食べよう北海道」のテーマの下、6月18日〜19日両日札幌市及び近郊で開催しました。
 1日目は江別製粉(株)安孫子建雄社長の「こだわりの北海道小麦の開発と生産」の講演をはじめ3名の講演、2日目は北海道を代表する現地圃場を2ケ所視察しました。今回も全国から170名参加し盛会裡に終了しました。実体験の話には大いなる説得力と感動がありました。
 来年は全肥商連創設60周年・法人化5周年記念式典と合わせ7月28日(木)東京経団連会館にて開催致します。

2.施肥技術マイスターと官民連携
 平成23年8月にスタートにした「施肥技術講習会」は、本年8月までに全国各地で14回開催しました。これまでの受講者総数は1,677名、施肥技術マイスターの登録者は1,451名となりました。
 第8回より参加した全国の普及指導員の受講者は今回までに130名となり、「施肥技術講習会」に対しての関心は益々高まってきております。
 施肥技術講習会では、「環境・資源・健康を考えた土と施肥の新知識」に加え、農水省の協力を得て日頃関心の薄い「肥料取締法」の講義も行っております。全国の農業現場で活躍している約7千名の普及指導員との協働による、正しく賢い施肥の普及を視野にいれ官民連携による農業普及事業の展開を次の目標としております。
 第15回施肥技術講習会は農水省及び東京農業大学の後援を得て来年2月25日、26日両日、東京農業大学 農大アカデミアセンター「横井講堂」で開催しますが、東京農大発(株)全国土の会とも連携していきます。(注:農水省「協同農業普及事業の運営指針」)

3.特別プログラムの全国展開
 都道府県部会の活動の活性化を図り、全肥商連の存在感を高めるため昨年スタートした特別プログラムは全国12道府県で実施されましたが、施肥技術研修、60周年記念講演、新農政学習講座など地域ニーズを盛り込んだ行事に予想を超える参加者を得て大成功でした。
 継続実施の要請も多く、規模を拡充し今後2年間継続することにしました。又、全肥商連の活動強化のため、理事数を現行の15名以内から30名以内に、副会長を3名から6名以内とし、新たに副理事制度も設けました。

4.『人を健康にする施肥』発刊
 元東京農業大学客員教授渡辺和彦先生の指導のもと、全肥商連会員がボランティアで翻訳に取り組んだ国際肥料協会と国際植物栄養協会の名著『Fertilizing Crops to Improve Human Health』は本年3月末に『人を健康にする施肥』として発刊されました。
 本著は人の健康と栄養素確保の改善を目的とした施肥技術の研究論文を編集したものですが、行政はじめ各団体より高い評価を受け、会員の皆様の協力により初版1,000冊は発売2ヶ月で完売することが出来ました。9月11日第5回定時社員総会終了後、全肥商連・全複工共催で『人を健康にする施肥』出版記念シンポジウムを開催しましたが170名以上の多くの方が参加しました。
 本書監修者でもある渡辺和彦先生からは「肥料関係者は農業と人の健康の頂点にいる」と、肥料業界に希望を与えるメッセージを、またデリカフーズ(株)丹羽真清社長はじめパネラーの方々からは日本農業の明るい将来に向かうための多くの示唆をいただきました。現在第2版を発売中です。この著書発刊が契機となり、農産物の機能性成分と生命食による食育への関心が高まり、来年2月16日には福岡、佐賀県部会、全肥商連九州共催の「食と農の懸け橋セミナー」を福岡県久留米市で開催しますが、渡辺和彦先生と丹羽真清社長による講演に注目が集まっております。

5.化成肥料3期連続値上げ
 平成27年度春肥価格は、高度化成0.6%、普通化成0.5%引き上げ、化成肥料は26年春肥・27年秋肥に続いて3期連続の値上げとなり、ほぼ25年春肥の価格水準に戻りました。
 一方、化成肥料の26肥年度出荷実績は、前年比高度化成101.1%・普通化成98.2%となったものの、3年前の24肥料度比ではそれぞれ91.6%・84.9%と大きく落ち込んでおり、ここ数年需要の低迷が続いています。来年度価格は今のところ大きな変動要因は見られないと思われますが、需要面では米価の動向、飼料用米生産、低コスト農法などがどう影響するか注視する必要があります。

6.太平物産(株)肥料偽装問題
 全農が太平物産(株)から購入し、JAを通して供給している肥料について、(1)肥料の成分不足、(2)登録外原料の使用、(3)有機原料不足が見つかりました。このため全農は同社の全製品を製造・出荷を停止し、出荷済みの製品全てを回収しましたが、その一部が「特別栽培農産物」「有機農産物」の表示ガイドラインに適合しないため、「特別栽培農産物」や「有機農産物」に対する消費者の信頼を損ないました。
 農水省は再発防止のため、複合肥料メーカーに対し、今後登録肥料の内容確認報告及び立入り検査を実施する方針です。太平物産は、民事再生法の適用を申請しました。これを他山の石とし「コンプライアンスは全てに優先する」ことを肝に銘じましょう。

7.農協改革
 3年前にスタートした安倍政権の「成長戦略」では、農業の成長産業化及び規制緩和を掲げておりましたが、岩盤規制の象徴的な存在であった農業協同組合・農業委員会・農業生産法人について法律を改定することを決めました。
 「地域農協は、自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにする。」「中央会・連合会は、地域農業の自由な経済活動を制約せず、適切にサポートする」としています。
 法律の施行期日は平成28年4月1日。具体的には、今後5年間に農協の理事構成の見直し、JA全農の株式会社化にむけた検討、全国中央会の一般社団法人への移行、農協に対する全中監査義務の廃止、農業委員の公選制の廃止等が実施されます。農協の活動が自由になることによる地域活性化が期待されています。

8.新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定
 我が国は平成24年より総人口が減少に移行し、高齢化が加速的に進み始めましたが、10年後の食料自給率を目標とした新たな「食料・農業・農村基本計画」が3月31日に閣議決定されました。
 基本計画では、農業や食品産業の成長産業化を進める「産業政策」と、農業・農村の多面的機能の発揮を進める「地域政策」を車の両輪として施策を展開していくこととしています。また、実現可能性を重視した「食料自給率」と食料の潜在生産能力を評価した「食料自給力指標」を公表しました。主食用米需要が毎年約8万トン減少している現実を踏まえた水田フル活用を実現するために飼料用米増産に踏み切りました。平成30年に予定されている米生産調整廃止、平成29年に国会に上程される予定の収入保険制度とともに、本計画の実行から目を離すことができません。9月15日現在の飼料用米の作付面積は前年比4.6万ha増の8.0万ha(42万トン)と大きく増加しています。
 今回の計画では、この10年間に農業従事者が激減すると想定しており、スマート農業の実現や農業へのIT導入を主唱しております。その一環で農作業の外部委託を促す農業サービス事業体構想があがっておりますが、官民協働による新たなテーマとして注目されています。

9.TPP大筋合意
 平成27年10月5日米国アトランタで開催された、参加12カ国による閣僚会議において環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意されました。TPPは世界のGDPの42%(3,100兆円)という、かってない規模の経済圏をカバーした経済連携協定です。農水省では、TPPの大筋合意を受け、夢と希望の持てる「農政新時代」を創造し、生産者の努力では対応できない分野の環境を整えるとしています。
 平成32年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標の前倒し達成を目指しています。「重要5品目」のうち米については、現行の国家貿易制度と枠外税率を維持するとともに、米国、豪州にSBS方式の国別枠を設定するとしています。又この国別枠の輸入量の増加が国産の主食用米の需給・価格に与える影響を遮断するため、毎年の政府備蓄米の運営を見直し(原則5年の保管期間を3年程度に短縮)国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れるとしています。
 参加12カ国による批准には更に2年かかる見込みですが、批准7年後には見直しが、またTPPの大筋合意を受けて世界GDPの43%を占める東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、同57%を占める日EU経済連携協定(EPA)、同55%を占める環大西洋貿易投資協定(TTIP)の広域FTA構想が進捗すると思われ、世界はまさに自由貿易時代に突入することになります。今回は聖域扱いをうけた米などの主要農産物の関税も今後10年以内に大幅引き下げになる可能性も高く、国産農産物の国際競争力向上は待ったなしの状況です。

10.「機能性表示食品」制度開始
 平成27年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまり、消費者庁から認可を受けた対象商品が6月から発売されました。機能性を表示する食品には、「特定保健食品(トクホ)」とサプリメントなどの「栄養機能食品」がありますが、国の審査基準が厳しく認可までに長時間が掛かると共に巨額の研究資金を必要とします。
 今回の「機能性表示食品」は、科学的根拠を示せば国の審査なしに健康への効用を表示できます。登録された「三ヶ日みかん」のβ-クリプトキサンチンは骨代謝の働きを助ける。「べにふうき緑茶」のメチル化カテキンはハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する。「大豆イソフラボン」は更年期障害を予防し美しい肌をつくることの表示が可能になりました。
 リコペン含有度の高いトマトは動脈硬化、ガン(肺、前立腺)を予防する効果がありますが、市場ではこれら機能性成分の高い農産物に対し2割ほど高い値をつけております。健康寿命延伸への期待と共に、機能性の高い農産物を生産する栽培技術の要求も高まります。

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